MIHO MUSEUMがすべての原点
1997年11月、滋賀県信楽にMIHO MUSEUMがオープンいたしました。世界的に評価の高いこの美術館の誕生は、私たちの芸術に対する関心を高め、その後、鎖で繋がっていくように様々な出来事が連鎖して起ってゆきました。
何もないところから全てが始まった
1998年1月、有志の方々の要望でピアノを購入する話が持ち上がり、いろいろな経緯を経て “Petrof” という手作りのピアノをShumei Hall, Pasadena に設置することになりました。早速こけら落しのコンサートをということで、1998年10月 Shumei Hall, Pasadena で “East/West Perspectives” (東洋と西洋の融合と調和)と題して初めてのコンサートを開催させて頂きました。国立音楽大学の講師をなさっていて、海外でも活躍中のピアニスト滝澤三枝子さんを迎えてのコンサートでした。
いつの日か、私たちの手で質の高い素晴らしいコンサートをさせて頂きたいとの願いが意外にも早く実現したものの、その準備に費やしたエネルギーは計り知れず、何もかも初めての戸惑いとチャレンジの連続で、このコンサートが終わった時続けてやって行くことなど到底不可能だと思いました。かかる費用をどうして集めるのかということの見通しや方法など全くありませんでした。
メッセージ
そんな折、ある友人の体験を聞かせていただきました。コンサートのあったその頃彼女はいろいろな悩み事が重なって鉛のような重い憂鬱感に襲われ、ついに寝られなくなってきてノイローゼの一歩手前という状況だったのですが、滝澤さんの演奏を聞いている最中にその心の重さが一気に晴れて、そのコンサートを境に元のように直ったというのです。彼女はクラシック音楽には全く興味がなく、ただ私たちが主催しているコンサートだからとの理由で参加していたのでした。ですから彼女が特に演奏にのめり込んでいた訳ではないのです。にもかかわらずこのような奇跡が起こりました。
「質の高い芸術に触れる事によって心や魂が浄められ癒される。」まさしくその通りの奇跡が初めてのコンサートで起こったのです。「神様が示された。」と思いました。見えない力に「やりなさい。」と背中を強く押されたような衝撃を感じました。「たった一人でもこのような体験をする人があるならば、どんなことがあってもやり続けなければいけないんだ。」という叱咤激励のメッセージだと思いました。
チャレンジ
このような使命感を感じて始まった Shumei Arts Council of America の活動ですが、それらの活動の資金作りは容易ではありません。アメリカではグラント (Grant) といって非営利団体の公共のための活動を資金援助する財団が無数にありますが、特に設立間もない団体は、その活動が認められグラントがおりるようになるまで多少時間がかかります。どんな活動をしているのかという確実な実績が必要ですから、とにかくやってゆかなければなりません。またどんなイベントも多くのスタッフが必要となります。
資金繰りを考えますと、ともすれば商業主義に流され本来の趣旨目的を見失ってしまうこともあるかもしれません。何のための活動なのかを常に明確に問い続ける必要があります。正しいことは如何なる困難に阻まれようともいつかは確かな形になってゆくと信じ、目の前にあることに必死で取り組んできたように思います。
そのような状況の中で多くの人々の励ましと協力に支えられ、2001年4月、パサディナ市のアートコミッションのグラントを審議するミーティングで、私たちの今までの活動と
website (www.shumeiarts.org) の質の高さが評価されました。2001年6月、IRS(アメリカ国税局)から正式な非営利団体としての認可の手紙を受け取り、2002年3月、ついに念願のグラント(助成金)が
Pasadena Showcase House for the Arts という団体から子供たちのためのコンサートシリーズに頂くことが出来ました。(通常正式な認可が降りてから最初のグラントが降りるまでに3〜4年はかかると言われています。)引き続いて7月にはロサンゼルス郡のアート委員会から
「シューメイ コンサートシリーズ」 に助成金をいただきました。(100点満点中、93.67の得点を頂き、ここでも私たちのコンサートプログラムの質の高さが評価されました。)
他の団体との協力関係
特筆すべきは、2000年4月から Kidspace Children’s Museum と Inner City Arts という団体と協力して、子供たちのためのコンサートをさせて頂く事になったことです。
カリフォルニア州の公立学校では予算不足のため、音楽や美術の先生を雇えないので、ほとんどの公立学校ではそれらの授業がありません。そういう社会背景を考慮して、
Kidspace Children’s Museum ではパサディナ市の公立小学校の先生に、音楽教育的な要素を普通の授業の中に取り入れられるようにワークショップのプログラムを作り、先生たちをトレーニングしていました。そのプログラムの最終課題は、その先生たちが受け持っている子供たちを連れてコンサートに行くというもので、そのコンサートを私たち
Shumei Arts Council of America, Inc. が用意し、Shumei Hall, Pasadena へ先生と子供たちを招待することになったのです。
Inner City Arts はロサンゼルスのダウンタウンに位置し、とても治安が悪く経済的な援助を必要とする人々が多くいる地域にあります。そういう環境にいる子供たちですから、中にはホームレスの収容所から学校へ通って来る子もおり、音楽や美術の教育機会に恵まれていません。Inner
City Arts はそれらの公立学校の子供たちに音楽と美術を無償で教えています。
これら二つの社会的に信用の厚い団体との協力関係の中で子供たちのためのコンサートが始まりましたが、その後2002年になって Kidspace Children's
Museum の先生をトレーニングするプログラムが打ち切りとなり、直接私たちがパサディナ公立学校区と連絡を取ることになりました。2000年以来延6000人以上の子供たちや先生方の参加をいただき(2005年7月現在)、パサディナ市の教育をサポートするプログラムとして定着しつつあります。
Miho Museum の理念
混迷利にある時代に生きている私たちにとりまして、この世に病、貧、争のない平和で調和のとれた世の中を作ることが私たちの究極の目的だと思います。芸術はこの目的を実現するための重要な要素であり、この究極の目的を具現化するために Miho Museum が誕生いたしました。
「質の高い芸術に触れることによって、心や魂が浄められ癒される。そして私たち一人一人の心や魂が向上することによって、社会が清く美しくなり、やがては世界平和へと繋がっていく。」との
Miho Museum の根底に流れる基本理念を、私たちのプログラムを通して世の人々に伝えていきたいと思います。
2005年7月
Jane Imai
Executive Director
Shumei Arts Council of America, Inc.